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7人のジャズピアニストのConfirmationのアドリブを比べます

  • 29 分前
  • 読了時間: 19分

  こんにちは、ジャズピアノ研究室管理人の田中です。


 本格的なブログ記事はご無沙汰してしまいましたが、7人のピアニストのConfirmationの一部を抜粋し、それらを比較することで、バップフレーズのお勉強をしてみましょう。という企画です。


ピアニストは、

Bud Powell

Barry Harris

Al Haig

Hank Jones

Tommy Flanagan

Oscar Peterson

Kenny Barron

です。


 ピーターソンのスタイルは若干バップとは異なりますが、影響も受けていますし勉強になります。他は概してビバップです。ただケニー・バロンは時代が新しいこともあり、バップを基調としながら、少し違ったサウンドを聞かせてくれます。(モンクの影響もあるかもしれませんが。)


 尚、抜粋するのは、アドリブ中のたったの前半コーラス、A~A‘部の16小節です。それだけで各ピアニストの解釈を網羅することはできないことは十分承知しています。ただ、このビバップの権化のような曲で、それぞれのアドリブを聴いてみることで、学べることもあるのではないかと思っています。尚、ビバップフレーズの基本的な考え方に関してはコチラの記事をお読みください。


 Confirmationという曲自体は、ブルースを元にして、FM7から5小節目のB♭7に向けてツーファイブを細かく挿入していった進行です。さらに続いて、B♭7からまたFに戻っていく進行です。7小節目のG7はいわゆるⅡ7(2度セブンス)ですので、教科書的にはリディアンセブンスなどのスケールがハマります。その後、B部はB♭メジャーとD♭メジャーのツーファイブワンを並べて、またFに戻ります。Blues for Aliceとこの曲のA部は非常に似た進行ですね。ビバップのブルースはこういった進行になることが多いです。


 譜例のコード進行は一般的なコードを機械的に並べているだけなので、細かい進行とフレーズの違いについては、本文を参照ください。尚、左手のボイシングはほとんどあるいは全く考慮していないので、実際の左手のコードによっては解釈が異なる可能性があります。(セブンス化、裏コードに行く、半音上にコードを足しているといった類。)


あくまで右手の単音フレーズに対しての説明になるため予めご了承下さい。

ではまずBudから。YouTube

Bud 2‘10

Barry 1‘50

Hank 1’30

Tommy 1’50

Peterson 2’50

Barron 1’20


楽譜

 これはローザンヌでの1962年の録音の演奏です。他のテイクとしては、私が知る限り、Bud plays BirdやBudismなどでもConfirmationを聴くことができます。単純な私の好みの問題で、ヨーロッパ時代の調子が良い時のバドが好きなので、今回はこのテイクを選びました。


 録音が悪いので、人によってはPlays Birdの方が好きかもしれません。ただ、ローザンヌのライブに比べて、若干調子はずれなフレーズが多く、アドリブの構成もチグハグな印象を受けます。また、Budismには2テイク収録されていますが、いずれもはっきり言ってひどい演奏で、片方は若干マシ、片方は本当にボロボロです。それでも、技巧の精確性だけは語れない妙な魅力があるのは、やはりバドの偉大さ故でしょうか。(こんなにヨレヨレ、ボロボロなはずなのに、並みのピアニストでは、逆立ちしてもこのスイング感は出せないと感じます。)


・2~3小節:、Fメジャー一発で取っていると言えそうです。楽譜の表記上ソ#としていますが、Fの3度のラに半音でアプローチしていったり来たりしていると考えます。2小節目の最初はミスタッチの可能性もあるかもしれません。


・4小節:Cm7は省略し、F7だけで3度から9度にかけてのよくあるアルペジオ。

B♭7の3度レに向けてスケール(B♭メジャー)でアプローチしています。非常にパクりやすいフレーズだと思います。


・6小節:コードトーンから考えると1、2拍の解釈が難しいです。3、4拍はD7というより、Am7♭5そのままですが、そこまで細かく理屈で説明しなくても良いでしょう。そんなに深く考えて弾いていないと思います。3裏はちょっと音が引っかかっています。


・7小節:コードとしては2度セブンスのG7ですので、1裏のシ♭は2表のG7の3度(シ)へのアプローチと解釈することにします。ラ(9th)とミ(13th)を含むフレーズで、8小節目の1表のGm7の7度(ファ)へアプローチ。ミ、ソ、ファ#→ファというディレイドリゾルブに注目です。


・8小節:最初はGm7のコードトーン。3、4拍目のレ#(#9th)とファ#(#11)の3連符はバドが非常によく弾きます。あとは半音で、Fメジャーのドにアプローチ。パクりやすいです。


・10~11小節:最初のレ、ファ、シ♭はEm7♭5でもA7でも解釈に困る音です。(教科書的にはファはEm7♭5、レはA7のアヴォイドです。)が、細かいことは気にしません。10小節の3拍目から11小節の1拍目で、11小節2拍目のDm7の3度のファにアプローチしていると言えます。ソ、ミ→ファです。


・11小節の3拍目からCm7を先取りしていると考えても良いし、12小節の最初のファはCm7の11thと考えて、11小節目の3表のミ♭はG7の♭13thと考えても良いです。

あるいは、12小節の2表でCm7の3度に着地したと考えることもできそうです。要するに、細かいコードトーンを厳密に追いかけるのはあくまで理論であって、実際にはそこまで細かく考えているわけではなく、大局的にフレーズを組んでいることが示唆されているということです。


・14小節:15小節のG7に向けて、いわゆるハーモニックマイナーを弾いていると考えればよいでしょう。(アベイラブルノートスケールで言えば、コードをD7と考えれば、ハーモニックマイナー・パーフェクト・5th・ビローになります。)これも非常にパクりやすいですね。


・15小節:Gm7ではなく、G7にすることで、ブルージーさが出ます。3、4拍目の動きもブルースらしい響きです。


続いて、こちらの記事でも紹介したバリー・ハリスのテイクです。(YouTube)録音のバランスが今一つで、注意しないとよく聞こえないですが、バド直系ピアニストということで是非、色々と学び取りましょう。

楽譜

・1~2小節:前のフレーズから連続していますが、Fメジャー一発と考えて良いでしょう。


・3小節:1裏でDm7の3度に着地します。


・4小節:次のB♭7のレに向けて4拍目からミ♭、レ♭→レとディレイドリゾルブしています。1~3拍目は厳密にコードトーンを追いかけてはいませんが、Cm7のソからフレーズを組み立てていますね。


・7~8小節:G7の9th(ラ)を含むアルペジオから、C7の♭13th(ラ♭)に飛んで、8小節目の2拍目からのミ、レ♭、ド、シ♭は、Fのラに行くときの典型的な音の並びかたです。


・11~12小節:Dm7のアルペジオからCm7のソにアプローチしていると考えて良いでしょう。Cm7でのフレーズを考えると、黒鍵(ラ♭)をまたいだ後のソをどの指で取るかは要注意です。


・13小節:最初のラ、ド→シ♭がルート音へのディレイドリゾルブ。続いて3表のラは半音下からルート音へのアプローチでその後、アルペジオ。


・14小節:Am7♭5を省略して、小節全体をD7と捉える方が分かりやすいかもしれません。D7の5度からフレーズ開始です。2、3拍目から、4表のレにアプローチするフレーズ(ファ#、ミ♭、ド、レ♭、レ)は頻出で、要習得です。また4拍目のレ、ドの後に、15小節の1表に素直にそのままシ♭(またはシ)に行けば、Gm7(やG7)の3度に綺麗につながります。※そして、下記の通り、実際にはラに行っており、若干事故っている可能性が考えられます。


・15~16小節:無理に説明をしようとすればスケールとかを後付けできるのかもしれないですが、あまり素直に解釈できる妥当なものが考え付きません。ライブ録音ですし、正直、ミスって勢いでごまかしている可能性も考えられます。力技で16小節の2拍目でFM7の3度のラに持って行って、なんとか収めている感じがします。ただのGm7-C7の所なのに、バリー・ハリスほどの人がどうしたのでしょうね?私の知見不足でしょうか・・・。


続いてのアル・ヘイグの演奏は、パーカーのNow’s the Timeに収録されているものです。(YouTube)パーカーのソロの後に、申し訳程度に弾いているだけなので、乗り切れていない所もあると思いますが、その分シンプルで分かりやすく、パクリやすいので、是非見ていきましょう。バップフレーズの基本である、コードの変わり目に、コードトーンにアプローチするというのが頻繁に行われています。

楽譜

・2小節:分かりやすくA7のコードトーンから、半音のラ♭を経由してDm7のラにアプローチしています。


・3小節:次のCm7のミ♭に向けて、ファから半音で装飾的にアプローチ。


・4小節:ミ、ソ、シ♭とコードトーンで、シ♭、ラ♭→ラと言う流れで、3表にF7の3度のラにアプローチ。その後9th(ソ)を含むアルペジオです。


・5小節:4小節目の最後から、ミ♭、ソ→ファというB♭7の5度に向かったディレイドリゾルブに注目です。


・6小節:Am7♭5の11thから開始と考えても、D7だけだと考えてもいいでしょう。次の小節のG7の7度のファにアプローチしています。


・7小節:9th(ラ)を含むアルペジオからのファ#を経由して4表でソにアプローチ。このラ、ファ#→ソは頻出です。解釈の仕方によっては、このラ、ファ#というのは、D7の5度3度を経由していると考えることも出来ます。メロディに和音付けする時には必須の考え方ですが、紛らわしいと思う場合はスルーしてください。


・8小節:4裏でFの5度ドを半拍早く食って入っています。こういうノリが大切。


・10小節:全部A7と考えて、♭9th(シ♭)からのフレーズです。シ♭、ラ♭→ラでルート音へアプローチした後、アルペジオで構成されています。


・11小節:10小節の4拍目からミ、ソ→ファでDm7にアプローチしているのに注目。4裏のシ♭はCm7の音を食っています。


・12小節:シ♭、ソ、ラ♭→ラでF7の3度に半拍食ってアプローチ。Cm7と連続して食っており、リズム遊びになっています。3裏からファ、ミ、ミ♭→レでB♭7の3度にアプローチです。


・15小節:レ、ファ、ミ♭→ミでC7の3度へのアプローチに注目です。


ハンク・ジョーンズはConfirmationをよく録音しており、それこそ、この後登場するトミフラとのOur Delightでの演奏もあります。一般的には、ロン・カーターとトニー・ウィリアムズとの初代グレートジャズトリオのビレッジバンガードライブの録音が有名でしょうか。基本的に、この曲にしては比較的ゆったり弾くのが特徴ですね。(YouTube

楽譜

・2小節:開始はEm7♭5の11thでもA7のルートでも良いですが、すぐに半音階になります。ここまで、他のピアニストでも出てきましたが、原則はコードトーンを狙うとはいえ、細かくとらえ過ぎずに、綺麗に響く音の枠組みの中で大きくコード進行を捉えることも大切です。4拍目の三連符もEm7♭5と、A7の♭9th(シ♭)が同時に見えている感じです。それにしても、ここのフレーズはいかにもハンク・ジョーンズです。


・3~4小節:最初のド#、ミ→レもDm7へのよくあるアプローチです。その後の3拍目、4拍目や4小節に入ってからも、厳密に、どこでG7になったとか、どれがCm7だというのは単音だけでは明確に判断が難しいです。たださすがに、4小節目の4拍目のラ、ファはF7でしょう。

 非常に細かく音を追いかけても、どの音がどのコードかはっきりしませんが、全体として、B♭7に向かっているサウンドはできているのです。これが理屈だけでコードトーンを追いかける基礎の段階と、実践の違いだと思います。

 ちなみに、Cm7でファの三連符から半音ずつ下がっていくフレーズは、ハンク・ジョーンズが非常によく弾きます。


・6小節:ここでも半音階が主体ですが、フレーズのアクセント(拍の表の音)がコード進行を感じさせる音なので、違和感はありません。繰り返しになりますが、Am7♭5から始めると考えても、D7だけで考えても、肝となる音は変わらず、度数の解釈が変わるだけと言えます。ここでは、ラやミ♭がポイントになっています。


・7小節:前の小節からG7のド#(#11)にアプローチされることで音が強調され、セオリー通りのリディアンセブンスの響きが感じられます。7小節のフレーズは非常にパクりやすいフレーズです。


・8小節:C7一発と考えて良いと思います。ディミニッシュ系のサウンドになっています。

(スケールはC7の俗に言うコンディミです。)

4裏で、半拍食って、Fの9thに行っています。


・10小節:1、2拍目もEm7♭5とA7が合体したような音使いです。3、4拍目はA7のオルタードフレーズです。ファは♭13thですね。このフレーズもパクりやすいですね。


・11小節:Dm7のラから半音で下がっているだけです。


・12小節:4拍目の装飾的なフレーズはGマイナーブルーススケールと考えると良いと思います。次のB♭7を主音とした、平行短調のブルーススケールということです。


・14小節:Fメジャー一発で弾いているようです。


・15小節:Fブルーススケールです。ツーファイブワンの進行の所で、ブルース一発で押し通す例です。


・16小節:3、4拍目のフレーズはDマイナーブルーススケールを感じますね。(Fの平行短調です)


 ピアニストにとって、トミフラのConfirmationは、同名のアルバムやそれの姉妹盤的なEclypsoが非常に有名で、この辺りは多くの人が耳コピしたり、解説も出回っていると思います。今回は、そんな有名なものを改めて取り上げても仕方ないということで、ちょっとレアなLive In Rome 1981からライブ録音です。ただ、時期も割と近いし、非常に安定しており雰囲気も似ていますから、よりトミフラのフレーズの理解を深めるのに役立てて頂ければと思います。(YouTube


楽譜

・-1~1小節、-1小節の2拍目のソ、シ♭→ラはFの3度へのアプローチ、4拍目のド、シ♭から1小節目のラ♭→ラもFの3度へのアプローチ。その後、9th(ソ)に向けたラ、ド、ミ、ソというアルペジオです。パクりやすいフレーズだと思います。


・2小節:トミフラは多くの場合、ここを1小節わかりやすくA7で取っていることが多いです。


・4小節:シンプルにコードトーンを中心に組み立てたフレーズです。4拍目のド、ミ♭からのB♭7のレのディレイドリゾルブに注目。


・5小節:ラとドでシ♭を挟み込んでコード感を出している所に注目です。ラが♭になっておらず、B♭M7感が強いです。


・6小節:先ほどのバリー・ハリスの14小節目と音の順番は違いますが、骨格は同じです。ファ#、ラ、ド、ミ♭は、D7(♭9)のディミニッシュ的なアルペジオですね。ここからパクりやすいフレーズが続きます。


・7小節:今度はハンク・ジョーンズの7小節目と同じで、ド#(#11th)を狙っています。後はラ(9th)を含んだアルペジオ的なフレーズ。ミ、ド#→レはG7の5度に向けたディレイドリゾルブです。パクりやすいです。


・9小節:Dマイナーブルーススケール的なフレーズです。ソからラに向けて装飾的に弾くのは、ブルージーなサウンドでよく出てきます。これもパクリやすいですね。


・12小節:2裏レが、3表のF7の7度のミ♭への半音アプローチと考えても良いですが、それよりはF7一発でコンディミのフレーズだと思う方がシンプルでしょう。(トライトーンサブスティテューションでD7と互換性があるので、D7のディミニッシュフレーズだと仮定して考えると、フレーズが見えやすいかもしれません。)これも弾きやすいですね。


・13小節:また、ラ、ドでシ♭を挟み込んでいるところに注目です。これもパクりやすい。


・14小節:今度はバドの14小節と発想が似ています。これも分かりやすいフレーズです。4拍目からファ#、ラ→ソで15小節目のGm7のソにディレイドリゾルブしています。


・15~16小節、上のラインのソ、ファ、ミの流れや2から3拍目のレ、ファ、ミのディレイドリゾルブなど、非常にきれいなフレーズです。


やはりトミフラは非常に勉強になると同時に、分かりやすいフレーズが多いと思います。


 続いてピーターソンです。私が知る限り、ロンドンハウスライブの5枚組コンプリート盤くらいでしか、ピーターソンの弾くConfirmationを聴くことができません。3枚目までに収録されたマスターテイクの曲たちは、バラで収録されたアルバムが存在するので、没テイク(?)に比べれば大分手に入りやすいです。


 しかしこの曲はマスターテイクではなく、5枚目の収録です。よって、聴くためには非常に入手が難しいコンプリート盤をゲットするしかありません。(最近は配信とかあるのでその限りでないかもしれませんが。)なぜこれをマスターテイクに入れなかったのか理由はよく分かりませんが、確かに、テンポがどんどん走っていたり、本人的には気に入らない部分があったのかもしれません。


 10分に渡り弾き倒し、盛り上がりどころでRockin' In Rhythmを引用するなど、恐ろしい名演で、貴重さも相まって、個人的には、ピーターソンのあらゆる録音の中でも上位に入る演奏だと思っています。

YouTube


楽譜

・1小節:FブルーススケールとDマイナーブルーススケールの複合的な音使いかと。4裏は次の小節のミに向かって半音下からアプローチ。


・2小節:Em7♭5が♭5になっておらず、Em7のアルペジオになっています。


・3~4小節:Dmのアルペジオ、G7の#11(ド#)、♭9(ラ♭)、4拍目から先度ってCmアルペジオを順番に弾いた後に、F7のオルタード的な音(♭9と#9の三連符)が入り、3、4拍目は、素直にB♭7のルートに向かって降りています。3、4拍目がファ、ミ、ド、ド#となり、B♭7でレにディレイドリゾルブしないのが、バップフレーズらしさが和らぐ要因かと。


・5小節:ファ、ラ、ド→シ♭のように、ラとドでシ♭を挟むのはトミフラもよく弾いていましたね。3、4拍目はB♭のブルーススケールです。


・6小節:5小節目から引き続き、前半はブルーススケールです。2拍目からブルーススケールの音ミ♭、ド#(レ♭)を経過して、D7のレに綺麗にアプローチ。この2拍目が、ブルーススケールとAm7♭5-D7の共有音(ピボット)の様な役割を果たしているように思います。その後、4拍目のド、ラから、次のG7のシにディレイドリゾルブ。


・7小節:半音階ですが、G7のコードトーンが1、2、3拍目の表ちゃんと来ておりコード感が出ています。4拍目はラ、シ♭、シで3度に半音のアプローチと言えそうです。


・8小節:3拍目で一旦Fに解決。3裏の左手はなぜかソです。このタイミングの左手の打撃はピーターソンよく弾きます。


・9小節:4裏は10小節目のラへの半音アプローチ。


・10小節:A7一発ですね。1裏から3表にかけての細かいアプローチの音使いはさまざまなターゲットノートを対象に練習しておくと良いでしょう。(ラ、ラ♭、ファ#→ソ)。4拍目のド#、ミからのDmのレへのアプローチも、他のピアニストでもよく出てくるディレイドリゾルブです。


・12小節:こういった重音はブルージーさを感じさせます。Cm7で考えると考えやすいでしょうか。


・13小節:3、4拍目から、14小節1表のシ♭へのラ、ド、シ、ラ→シ♭のディレイドリゾルブも頻出です。


・14小節:やはりここの前半はブルーススケールです。15小節の2拍目にラに向けて、15小節の1拍目からシ♭、ラ♭→ラとアプローチしているので、1拍フレーズが飛び出した感じに聞こえます。

(繰り返しますが、アプローチの基本は1、3拍目です)


・15~16小節:トップのラインが、ラ、ラ♭、ソ、ファと綺麗に並んでいます。16小節の3裏から、次の小節のファ(Cm7の11th)に向けたソ、ファ#、ミ→ファというディレイドリゾルブの音形も、上記で何度か登場した形です。このようにぐるっと回ってターゲットに着地する感覚を養うのが重要です。


 ケニー・バロンは自身のマスタークラスで、Confirmationを「バップスタイル」の例として頻繁に取り上げているようです。以前はYouTubeにもその動画があがっていました。しかし、作品としてはそこまで多くはなく、上記バリー・ハリスとの共演である同名のアルバム、ハービーSとのデュオ作品、Stefano Di Battistaのサイド参加位しか把握できておりません。自身が公言しているように、(ジャズピアノをやる上で不可避なバドは置いておくとして)トミフラから強い影響を受けているということで、比較的シンプルで分かりやすいフレーズが多いように思います。ただし、時代が若干新しいこともあり、ひとひねりしたフレーズも聞けます。モンクの影響を感じることもあります。(YouTube

楽譜

・1小節:ただのアルペジオですね。


・2小節:A7の裏コードであるE♭7の響きを感じるフレーズです。場合によっては、最初はEm7♭5に沿ったフレーズと考えても良いと思います。


・3小節:最初の右手は弾いていませんが、左手はDm7をD7として、そのガイドトーン(3度7度、ファ#、ド)を弾いており、そのため裏コードのA♭7の様にも聞こえます。後程、再登場する時も同じサウンドです。3、4拍目を普通にG7と考えれば、テンションは♭9th(ラ♭)と♭13th(ミ♭)になります。


・4小節:小節を通してF7のオルタードで通しています。ケニー・バロンが非常によく弾くフレーズです。


・5小節:4小節からの流れで、素直に弾けば、最初は3度のレに行きたくなりますが、#11のミ始まるトリッキーなサウンドです。ホールトーンのサウンドが感じられるフレーズです。また、このような、1オクターブから3音抜き出した塊をトライトニックと呼ぶことがあります。


・6小節:ミ♭、ド#→レでD7へアプローチしていると言えます。


・7~8小節:7小節ではG7を弾かずに2小節C7としています。このフレーズもケニー・バロンが非常によく弾きます。ちなみに、鍵盤配置上、F7とC7で非常に移調がしやすいフレーズです。8小節目の1裏の場所は、セオリー的には3度のミを弾くことが多いですが、ケニー・バロンは4度を弾きます。(上記、移調時のF7を弾く時はシを弾いています。)意外と♭13から3度って離れているので、4度の方が近くて弾きやすく、それが理由になっているかもしれません。8小節目の4拍目からのミ、ソ→ファは綺麗なディレイドリゾルブです。


・10小節:少しコードトーンからは想定しにくい音ですが、F一発が継続していると考えるのが良さそうです。2拍目のシ♭、ラ♭は3表のラにアプローチ、3、4拍のファ、ミ、レは、11小節のミ♭へのアプローチです。(ついでに、ラファミレはFメジャー的な構成音です。)細かく見るとそうなりますが、全体的には11小節のミ♭へのアプローチと考えられそうです。3小節で述べた内容や以下の通り、ミ♭はD7の裏コードのA♭7の5度になるでしょう。


・11小節:3小節で述べた通り、ここの左手はトライトーンを抑えています。右手がA♭主体のフレーズであり、D7というより、A♭7のようなサウンドがします。その後のG7も音の流れ的に、少し浮遊感があります。


・12小節:最初の2拍は少しごちゃごちゃしていますが、3、4拍は典型的なオルタードのフレーズです。


・13小節:またしても、素直にはレに行かずにミに行っています。今度は2回目の塊では4表のシに♭が付いていないため、Eのメジャートライアドが登場します。ちなみにE7はB♭7の裏コードです。


・14小節:1、2拍目は先ほどと同じ。3、4拍目のラ、ド、シ、ラから、15小節のシ♭への解決もよくあるディレイドリゾルブですね。


・15小節:2裏のソ#(ラ♭)がブルージーな響きを与えているように思います。


・16小節:こういった重音フレーズは、ブルージーで非常に効果的なアクセントになっています。

以上、いかがでしたか?


 ピアニスト毎に、コード進行に対する音使いが結構異なることが分かったと思います。頻繁にコードを無視したり、長さを調整したりしています。(左手を精密に採るとより顕著に分かると思われます。)


 また、フレーズ自体は、あるターゲットノートを狙ってアプローチをしたら、そのアプローチされたターゲットノートが次のアプローチの起点になるなど、非常に連続的です。3~4小節くらい、ほとんど休符がはいっていないフレーズがたくさん確認できると思います。


 その中でも、バドの8小節目、14小節目、バリー・ハリスの14小節目、アル・ヘイグの4小節目、10小節目のように、非常に分かりやすいフレーズもあれば、ハンク・ジョーンズの2~4小節目、ケニー・バロンの5小節目、7小節目など、どういったコード解釈をしているか、パッと分かりにくいフレーズまで、様々なフレーズが存在しています。


 分かりやすい分かりにくいと言うのを言い換えるならば、前者のような分かりやすいフレーズはコードの変わり目にコードトーンをターゲットにしていたり、アルペジオのような音使いの傾向が強く、後者はその逆です。


 そして、このターゲットを追う時に、(1拍ごとの様な例外を除き)最小単位である2拍ごとのコードチェンジに対応できれば、あとはフレーズのターゲットは4拍、8拍など間隔が広がっていく方向となります。つまり、2拍でターゲットを縛り続けられるよりフレーズの組み立てに余裕が出てきます。


 実際に、上記の耳コピ例でも、徹頭徹尾、2拍ずつコードを追いかけて弾いている人は皆無で、適宜コードを延長したり端折ったりしています。(むしろ、2拍ずつ馬鹿正直に追いかけ続ける方が、かえって単調でつまらなくなる危険性すらあると思います。)


 以上のことから、私は、アドリブをどうしたら弾けるか分からないうちは、あくまで基礎練習として、2拍ずつコードトーンを追いかける感覚を養いつつ、そこから耳コピなどで、より実践的な自然なフレーズを解釈すると良いと考えているわけです。


 これは、ベースのラインが教科書的にはコードの変わり目にルート音を置き、3度や5度の音を経過しながら組み立てられるというのと同じです。実際のベースラインは、もっと複雑で多岐に渡り、臨機応変ですが、大枠では曲の進行を表しているわけです。


 以上の点に興味を持たれた方はI’ll close my eyes型のコード進行(Confirmationと実質同じです)を用いた2拍ずつのアプローチの基礎練習がこちらにございますので、

今回の内容と併せて、是非ご活用下さい。


今回の内容が役に立ちましたら幸いです。



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