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ジャズピアノのイントロについて解説します

  • 2024年6月22日
  • 読了時間: 14分

更新日:1月12日


  こんにちは、ジャズピアノ研究室管理人の田中です。


 ジャズピアノ初心者がセッションで悩むことのひとつにイントロ出しというのがあるでしょう。私もビッグバンドでたくさんのイントロ弾いてきましたが、未だに苦手意識があります。


 ピアノでイントロが出せない場合はドラマーにカウントをお願いするという対策を採りますが、このことからも、イントロよりはカウントの方がやりやすく、ピアノのイントロに一定の難しさがあることが伺えます。


 そこで、カウントとイントロを比較、整理し、どういったイントロを出すのが良いのかを考えていきます。

この記事を読むことで、ジャズのイントロ出しの基本の考え方を知ることができると思いますので、是非あなたの練習に役立てて頂ければ幸いです。


 早速ですが、そもそもイントロやカウントの役割としては、テンポと演奏開始のポイントをバンドメンバーに提示することだと考えて良いでしょう。もちろん、最終的には、イントロによって曲の雰囲気を提示したり、(例えばソニークラークのクールストラッティンの様に)逆にイントロは出さないでカウントからいきなりテーマに入ったり、ピアノ以外の楽器でイントロを弾くという選択も、音楽表現の一部です。


 もっと言えば、カウントに関しても細かい話をすれば、上手い下手はありますし、例えばテンポに応じた1,3拍や2、4拍や3連符の伝え方、演奏曲の最初のメロディーに応じた使い分け、2ビートを感じやすいカウントなどは存在します。ドラマーさんもちゃんと考えています。また、世界トップクラスのミュージシャンのカウントを聴けば、カウントだけで音楽になるくらいグルーブ感があるのが分かります。


 

 が、今回はそこまでの話はしません。なぜならば、細かい音楽表現や演奏の雰囲気まで考えて、洗練されたイントロを弾けるレベルならば、そもそもイントロ出しに悩んだりしないからです。もちろん、イントロがこれから演奏する演奏の重要な一部であるということは誰もが頭に入れるべきです。


 しかし良くも悪くもイントロ(やカウント)というものは演奏者の実力をありのままに出してしまうため、表現まで考えようとした所で、結局その人が弾ける範囲内でのイントロにしかなりません。


 例えば、中音域でカッコイイテンションを含んだルートレスボイシングを弾き、右手で華麗なバップフレーズを弾けばカッコ良いイントロになる。とか、ドミナントペダルがどうこう、のようなことを知識だけで知っていても、それらをちゃんと弾ける実力がなければ、結局弾けないのです。では完コピしたイントロならばどうか、ということですが、残念ながらコピーはコピーで、そうは問屋が卸しません。この辺りは後述します。


 それから、誤解なきように補足すると、上記のことは私が上から目線で偉そうに言っているのではない。ということは理解してください。繰り返しになりますが、私もイントロに苦手意識はあります。セッションで弾き直しをして、場を白けさせたこともあるし、バンドのメンバーに「拍出てない」と言われたことも数知れず。


 むしろこういった立場から、イントロについて考えているということをご承知おき下さい。最初から上手い人はいないですから、下手に背伸びしたり、無理に分からないことや難しいことをやろうとせず、自分ができる範囲のことをしっかり表現するのが良いと思っています。


 そうやって頑張って弾いてみた録音を聴いて、思った以上に上手く弾けていなくて落ち込んだとしても、それが次のステップへの足掛かりになるはずです。


 以上を踏まえた上で、ここからは、イントロに苦手意識を持つ人でも、カウントならばできるという前提で話を進めたいと思います。もしカウントができない場合は、それはジャズのテンポやリズムを感じることができておらず、そもそもイントロを弾く以前の状態であるため、別の対策が必要です。その対策については別途ブログを書いて、また記事にしたいと思いますのでしばらくお待ちください。


 では、カウントならば出せるのに、なぜピアノのイントロが難しいのでしょうか?それを紐解くために、今一度、カウントの役割である「テンポ」と「演奏開始位置」の提示というポイントに分解して、考えてみましょう。(一応、再度繰り返しますが、今回は、曲の雰囲気や細かいビートをメンバーに感じさせるところまでの話はしていません。)


 カウントを行う時、ドラマーは自らがテンポやリズムを感じ、スティックを鳴らすことで、メンバーにそれを提示しています。


 この時、演奏者それぞれが出されたテンポを感じ、バンド全体でテンポを共有した。という空気が出来上がると、「ワン、ツー、・・・」とカウントが始まります。そして、この掛け声が始まってから、演奏が始まるのは、ミディアムテンポでは2小節、速くなってくると4小節後になることもあるでしょう。

あえて表現するなら以下の様な楽譜になりますが、イメージできますでしょうか?


<ミディアムテンポの時>

楽譜

<速いテンポの時>


楽譜


 音符のところでスティックが叩かれて、カウントはスティックの鳴らない、1、3拍に入ります。ただ、テンポが速いと、1、3拍でスティック鳴らす場合もありますね。


 この時、カウントの3小節でも1小節でもなく、2、4小節です。これは、ジャズの小節が基本的に2単位でリズムを感じるようになっているためです。


 つまり、ピアノでイントロを出せない人は、イントロを弾くとき、「テンポ」「開始位置」に相当するどちらか、あるいは両方の提示が出来ていないということになります。



 順序が逆転しますが、先にカウントの声出し「ワン、ツー・・・」に相当する、「場所の提示、演奏開始位置」が出せない場合について考えます。


 繰り返しになりますが、カウントの際にはこの声出しから、演奏が始まるまで2ないし4小節です。一方で、ピアノイントロは原則8小節弾かれます。カウントが短くて大丈夫な理由は、既にお気づきの通り、先んじてスティックを叩いてメンバー全体でテンポの共有を行っており、演奏開始の心の準備ができている状態だからです。


 一方で、イントロの場合はある意味、無の状態から8小節間で、そのテンポ共有と場所の提示を両方行うため、2小節や4小節では短過ぎて、ちょっとメンバーが付いてこられないわけです。


 そこでメンバーが付いてこられないことが無いよう、イントロにおいて「場所の提示」を行っているのがコード進行だと考えてもらえば良いでしょう。それがそのまま、イントロの小節数につながってきます。


 なぜならば、ジャズの小節感覚の性質上、奇数小節は論外だとして、4小節の次は8小節で一区切りしやすく、ジャズ演奏家はそこに綺麗にハマるコード進行を聴きながら予測しているからです。従って4小節で足りないならば、次は6小節ではなく、8小節が素直だということです。(8小節より長い場合は、主旨が変わってくるでしょう。また、ベイシーが弾く6小節のイントロとかもありますが。)


 従って、8小節一区切りに感じさせたり、予定調和を予測できるようなコード進行を弾かないと、聞いている方は、どこをやっているか分からなくなったり、入ると予測していた場所で入れなくなってしまうのです。


 これが、イントロの方が、カウントよりも難しいと感じさせる要素の一つ目です。つまり、変な話「ワン、ツー・・・」というのは誰でもできますが、8小節で予定調和を感じさせるコード進行を組み立てられなければ、イントロで「場所を提示」し損ねるのです。


 こういったコード進行にどのようなものがあるかについては、最後に実例と共に解説します。



 次にスティックを鳴らすことに相当する、「テンポの提示」ができない点について考えます。この理由は簡単で「楽器で安定したリズムが出せない。」ということになります。


この原因として考えられるのは、以下のようなものです。

・ピアノの演奏技術的が安定していないため出したい所で音が出ずに、それが変なリズムになっている。

・8分音符のフレーズで出そうとしているがその指回りが怪しい。

・正しい鍵盤を弾くという意味での演奏技術、楽器のコントロールは文句なしでも、スイング感を出すピアノのタッチ、裏拍の位置が甘いという問題を抱えている。

などです。


 もうお気づきかもしれませんが、実はこちらの方が、イントロを弾くうえで大きな課題となることが多いです。つまり、「場所の提示」に関しては、コード進行を勉強して、そのパターンを知れば、ある程度は再現が可能です。しかし、こういったリズムやスイング感の部分というのは一朝一夕で取得できるものではなく、また譜面で表せるものでもありません。


 私が冒頭で、「良くも悪くもイントロというものは演奏者の実力をありのままに出してしまう」と書いたのはこの要素が非常に大きいです。また、普段はドラムとベースが一緒に演奏してくれている場合、イントロを一人で弾かなければならない場面に置かれてようやく、ピアノ一人でリズムを出すことの大変さを知ることになります。ちなみに、これの完全上位互換がジャズピアノソロでの演奏になります。


 先ほど述べた、仮に音だけ完コピしたところで、そうは問屋が卸さないというのも、ここに繋がります。


 私はビッグバンドのピアノはイントロ出しをたくさん経験してきましたが、その音楽の性質上、かなりコピーを重視することになります。(もちろん、コンボ演奏のイントロをコピーした場合でも本質は同じです。)

 

 例えば、ある時期以降のベイシーは音数が少なく、音だけ出すならば比較的易しいものが多いです。ところが、少ないから簡単というわけではありません。なぜならば、音数が少ないということは、その音が切れる位置がわずかにずれたり、次の音の入りが遅れたり、突っ込んだりすると、簡単にスイング感は失われるからです。結局、自分自身も相当スイングを感じ、それをピアノで表現する実力が無ければ、スイングしないのです。

※YouTubeチャンネルのBasieイントロ再生リストはコチラ


 逆に音数が多いものであれば、そもそも技術的に弾くことに精一杯になり、わずかなリズムのよれや、裏拍の位置のずれが簡単にスイング感を喪失させます。一流のピアニストのイントロは非常に高度ですので、頑張って練習しても、それをセッションなどでいつでも難なく再現するには無理があることがほとんどです。例)Kenny BarronのOn a Slow Boat to Chinaのイントロはコチラ


 ですから、完コピしたところで、それをどこまで参考にすれば自分の技術でコントロールし、いつでもイントロとして活用することができ、かつ音源のスイング感や雰囲気をなるべく失わずに済むか。という落としどころを見つけるには、それ相応のジャズに対する理解が必要です。


 そもそも、初心者の頃は、コピーしているつもりでも音が拾えていなかったり、リズムがおかしかったりするのもよくあることです。そういった自分なり試行錯誤を経て、演奏時に最終的に実際に鳴る音というのは、結局は奏者の実力をありのままに映し出しているということです。


 もちろん、全員がそういった過程を経て上手くなっていくので、コピーを試しても最初は上手く弾けないのは普通のことだと思います。誰もが通る道だと知れば、自分の演奏に必要以上に自信喪失することもなくなります。



 そして、イントロはテンポの提示とコードを出することがポイントという内容を考えれば、なぜ、ピアノがイントロに向いていて、任される機会が多いかも分かるでしょう。


 具体的にはピアノは打弦鍵盤楽器であり、打楽器的要素とコード要素を持っています。これにより、「リズム、テンポの提示」と「場所の提示」におけるコードの出しやすさを兼ね備えています。ですから、イントロに悩むジャズピアノ初心者の方は、難しく考えずに、他の楽器が出すよりは、まだピアノはイントロが出しやすいことを理解して頂き、むしろその役割を楽しんでもらえればと思います。


 ちなみに、他の楽器でもイントロを出すことはできます。管楽器はバップフレーズのラインによりコード感を出すことは可能ですし、ベーシストはそもそもベースラインでコードを提示し続けるのが、演奏での主な役割です。もちろん、ドラマーも8小節で出してと言われれば出すでしょう。(それが出来なければ8バースができません。)ということで、ある程度以上のレベルの演奏者ならば、その気になればピアノ以外でも問題なくイントロを出します。


 セッションにおいて、どうしても一人で出すのが難しかったり、テンポが乱れてしまう場合は、周りの楽器の力を借りたり、ドラマーにシンバルレガートだけはしてもらって、それに乗っかってコードを弾く。といった方法でイントロ出しに慣れるという方法もあります。いずれにせよテンポを一人で出す、というのはジャズを弾くうえで非常に重要なスキルです。それを鍛えるという意味でも、イントロは練習すれば必ず身になる内容だと知っておくと良いでしょう。



 以下に、私の拙い演奏で申し訳ないですが、「場所の提示」をしやすいコード進行とそのイントロの例を示し、簡単に解説を入れておきます。といっても、ここまでお読み頂いて分かる通り、「これを弾けばあなたもジャズピアニスト」みたいなイントロは存在しません。以下の例が簡単だと思えば、自分なりにアレンジしたり、もっとちゃんとした音源をコピーしても良いでしょう。


 キーはFメジャーで行きます。(Foggy Dayみたい)右手のシンコペーションはウィントンケリーの、Kelly Blue収録のグリーンドルフィンの右手のイメージです。ただ、あちらは左手のリズムが2拍裏で入っていますが、こちらの例は少し違います。今回のリズムもちゃんと存在するので安心して下さい。


 コード進行的には、最初の4小節で所謂、循環(Ⅰ-Ⅵ7-Ⅱm7-Ⅴ7)コードを一小節ずつ弾いて、5小節目にFを伸ばすことで、イントロの終わりを予感させます。6小節目でツーファイブに入ったところで、左手を2、4拍に切り替えて、雰囲気の変化を与え、7小節目でFメジャーに解決です。最初から、ずっと2、4拍で打ち続けても良いかもしれません。少し雰囲気変わります。あと、このラ(シ♭)シドー、の音形は非常に入りやすい親切なフレーズです。8小節の2拍裏のC7は突っ込まないように気を付けましょう。

尚、1~4小節目をもう一度繰り返しても、聞いているメンバーが入れないことはないですが、通常イントロは7小節目に一度キーに解決した方が、聞いている方が安心します。


楽譜


 

 あと、これをビバップ的なイントロにしたものも載せておきます。あまり通常のセッションで弾く機会はなさそうだなと、感じて頂ければと思います。



楽譜





もう一つのイントロのパターンとして、

|Ⅱm7|Ⅴ7|Ⅲm7|Ⅵ7|Ⅱm7|Ⅴ7|Ⅰ|(Ⅱm7-Ⅴ7)|、

Fメジャーで言えば

|Gm7|C7|Am7|D7|Gm7|C7|F△|(Gm7-C7)|

という進行があります。


 一番目のイントロと異なり、ちょっとロマンチックで綺麗な雰囲気になりやすいです。ミディアムテンポの綺麗なメロディの歌モノにはよく合う進行です。


 が、この進行は個人的にちょっとやっかいだと思っています。その理由として、2回目(5、6、7小節目)のツーファイブワン(Gm7-C7-F)の時に、ベースラインと言うか、4ビートを感じるリズムが欲しくなるからです。


 しかし、それをピアノ一人で感じさせるのは、実は結構難しいのです。実際にベースラインを弾く必要はないのですが、聴いている方があたかもそれを感じるような音使いが望ましく、私はこれは一気に難易度が上がるように感じます。尚、曲の後ろの8小節のコード進行を用いたイントロの場合も、大抵、5、6小節でツーファイブと来るので、意外な落とし穴になります。ピアニストたちは何気なくやっていますが、自分でやろうとすると、その難しさが分かります。


 例えば、Fly me to the Moonの様に、キーがメジャーでもちょっとセンチメンタルで哀愁のある曲は、あまりメジャー雰囲気を全面に押し出したイントロは合いません。そのため、イントロ5、6小節目でツーファイブが来たりします。


 その場合の私が知る唯一の対策としては、「同じ様なフレーズを2回繰り返す。」です。これならば、あまり、2回目のツーファイブワンで4ビート感が無くても違和感がありません。また、7小節目でCに行かず、一旦Em7を経由すると、メジャー感が薄れます。通常、よく演奏されるCメジャーのキーで、Fly me to the Moonのイントロの例を挙げておきます。


楽譜



ちなみに今回は詳しく触れませんが、マイナーのキーについては、

|Ⅰm |Ⅱm7(-5)-Ⅴ7|を4回繰り返せば何とかなります。



 最後にまとめますが、ジャズピアノ初心者にとって、イントロというのは苦手意識を持ちやすいものです。その内容をドラムのカウントと比較し、「テンポの提示」と「場所の提示」という二つの要素から、イントロ出しのポイントを考えました。


 テンポの提示におけるスイング感の表現は、場所の提示に必要なコード知識よりも習得が難しいと考えられます。このことが良くも悪くもイントロにより奏者の実力が露見する理由ですが、イントロの練習も、ジャズの上達に重要な内容が多いので、楽しみながら取り組んでみると良いでしょう。初めのうちはイントロ出しに他の楽器の助けを借りるのも有効です。


今回の記事があなたの練習の役に立てば幸いです。



ジャズピアノ研究室 管理人

田中正大



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