何となくジャズピアノに興味を持ち始めたものの、何をしていいかよく分からない人へ
- 2024年5月9日
- 読了時間: 12分
更新日:2024年6月28日
私がジャズに出会ったのは、「大学のサークルでピアノを弾けるところがそこだけだった。」というどうしようもない理由で、ジャズビックバンドサークルに入部した時でした。当然、ジャズのことなど何も知らず、先輩からしたら、さぞやる気のない新入生に見えたことでしょう。
そんな私も、徐々に時間をかけることで、すっかりご覧の通りとなりました。
この記事を読んで頂くことで、あなたがジャズピアノの練習を楽しんで取り組めるきっかけになれば幸いです。私自身の過去の経験も踏まえて、一部反省も込めた内容も含まれますので、色々参考になれば、と思っております。
あくまで一意見ですので、ジャズに何となく興味を持ち始めて上手くなりたいと思っていながら、なかなか思うようにいかない、何をしていいか分からない等の場合は、以下に挙げた内容を軽くチェックしてみるのはいかがでしょうか。それでは早速見てきましょう。
1.実はまだジャズが好きじゃない、好きなジャズが分かっていない
意外と当てはまっている方はいませんか?もちろん、それ自体は何も悪いことではありません。そこから、ジャズが好きになることも十分考えられます。
では、そもそもなぜ、ジャズがそれほど好きじゃないのに、ジャズを弾こうとする事態が発生するのでしょう。その理由はピアノというのは、子供の時の習い事などでクラシックピアノなどの練習から開始して、その後、何らかのきっかけでそれ以外を弾きたいと思った場合に、選択肢が意外と少ないからだと考えています。
世の中でよく聞く○○ピアノと言う言葉で「レゲエピアノ」「ボサノバピアノ」「モントゥーノピアノ」よりも、「ジャズピアノ」「ポップスピアノ」の方が、圧倒的に耳馴染みがあるはずです。そのうち、ポップスピアノですが、世間でよく知られた人気のポップミュージックをピアノで弾くため、多少のスタイルの違いはともかく、イメージしやすく、誤解も少ないはずです。また、扱う曲もなじみが深く、やり始めてから思っていたのと違ったということも少ないでしょう。
一方、ジャズは学校の音楽の授業で扱われる機会も、クラシックに比べればはるかに少ないです。そのためピアノという楽器がジャズの主要楽器の一つである、言い換えれば「ジャズピアノ」という表現に何ら不自然さがないにもかかわらず、ジャズに対する理解度が醸成されていないということです。結果、「即興」「アドリブ」「おしゃれ」「アレンジ」といったイメージが先行して、「ジャズピアノ」を弾きたいと考えるも、「現実」とのギャップに戸惑うという事態が発生します。
そのギャップの具体例としては、
・アドリブや即興といっても、実は好き勝手に弾いているわけではなく、
かなりの決まり事がある。適当に弾いたところで全く音楽にならない。
・アドリブのための練習というのも、全然「自由」じゃない。勉強的な側面がある。
・集団によるアンサンブル主体の音楽のため、上達のためにアンサンブルが必要。
しかし、なかなかその機会を作れない。知らない人といきなりアンサンブルするのが怖い。
・そもそも、基本的にはアンサンブルでやるものだと初めて知る。
・ある程度上達しないと音楽を成立させることができない。自分は楽譜が無いと何もできないことに気付く。
・ましてピアノは一人で弾けるのが一つの魅力なのに、ソロピアノを弾きたくてもフリーズ状態に陥る。
・ジャズが上手くなるためには、たくさんの音源を聞く必要があり、その音源を聞く時間というのが、ピアノの技術的な練習と同じくらい重要だと知る。
これらのギャップから生じる、「挫折しそう。これならこれまでのようにクラシック音楽に戻ったほうが楽しいかもしれない」という気持ちと、「でもクラシック以外も弾きたい。アドリブとかできるようになりたい」という気持ちの間で葛藤(言い過ぎ?)することになります。葛藤しない人は、大抵あっさりジャズをやめて元の音楽に戻っていきます。
結果、練習に身が入らないか、ネットでジャズアレンジ楽譜やコピー譜を漁って気を紛らわせ、ジャズが弾けるようにならないと悩むことになります。
上記は傾向としての例ではありますが、クラシックや、ジャズをやり始める前の音楽で揺れ動いている状態にあるのが、この項に該当する人です。(但し、譜面が弾ければ満足ということで、アレンジ譜面を弾いて楽しんでいる場合は、この限りではありません。)
ここに当てはまる人が、自分はジャズが好きなのかどうかを自己診断する方法としては以下の通りです。全て完全に白黒つける必要はありませんが、
・定期的にプロのライブを聴きにいっているか
・「今または、最近、(ジャズで)どんなのを聴いている?」と質問されたときに、
答えに窮することはないか
・セッションに参加したり、それが無理でもマイナスワンなどで疑似アンサンブルを体験しているか
・耳コピをしたい、どんなことをしているか知りたいと思うジャズピアニストがいるか
(多少なりとも練習を楽しんでいるか)
といった項目です。この辺りを確認して回答に引っかかる場合、今の所、あなたがつまずいている理由は「実はまだジャズが好きじゃない」可能性が高いと考えられます。
ただ、誰しも最初からジャズにのめり込むとは限りません。そこで私からのジャズ好きになるきっかけとして提案したいのは、タワレコの安いコンピレーションアルバム等(1500円位で3枚組みたいなもの)で、色々聞いてみて、ピンとくるものを探すのが良いでしょう。その結果、ジャズに目覚めて楽しく練習できるようになる可能性があります。
この時のポイントは二つあります。
1つ目は同一ミュージシャンではなく、オムニバスものを選ぶということです。それによって、様々なスタイルのジャズピアノを聴くことができ、何となく自分の好みの傾向が分かるはずです。あとはそこを掘っていきます。そして残念ながら、これだけ聞いても全体的にぴんと来ない、というのも重要なフィードバックです。
2つ目はなるべくちゃんと買って聞くことです。理由としてはサブスクや動画配信サイトではなかなか真剣に聞かないからです。1500円払えば、さすがに一通り聞くでしょう。それで好きなものが見つかれば、安いものだと思います。ただ、お金の価値観は人それぞれなので、こちらは提案にとどめます。
とはいえ、最悪どうしてもピンと来るものが無くても、その程度の金額ならば外食一回分なのでダメージが少ないはずです。ついでに使用感が出ていない早い段階で中古屋やネットオークションにでも出せば、いくらか戻ってきます。
好きにさえなれば、練習は多かれ少なかれ継続可能です。継続していれば上手くなります。上にはいくらでも上がいますので、あとどこまで目指すかは、あなた次第だと思います。ただ、せっかくですので、まずはジャズを好きになりましょう。
2.理論偏重になっていないか
現在はネットを使えば無料で様々な情報が手に入りますし、無料で公開されている情報の中にも、無料とは思えないほど質の高いものが多く存在します。そして、情報を提供する側として比較的説明しやすいのが音楽理論です。
なぜなら、理論というのは再現性があるからです。説明の上手い下手は置いておいて、誰が説明しても、理論なのだから同じ内容になるはずです。また最悪、ジャズが弾けなくても、理論の説明は可能です。そして、理論にも難易度や段階はありますが、易しい所から順を追えば理解できるように整理されています。したがって、入門的な内容を扱えば、初心者にも「学習の達成感」を感じさせやすい効果があります。
その結果、動画で理論を勉強するだけで、新しい境地に達したり、ジャズが上手くなった錯覚をしやすくなります。「今まで自分が使ったことのないスケールやボイシングの存在を知る」とか「勉強した理論でフレーズを自作する」といったところです。もちろん、それが上手くいく場合もあるかもしれませんので、全否定はできません。
理論の勉強の是非よりも、ここで私が言いたいのは、音源を聞かなくなるのが危ういということです。もちろん理論は勉強した方が良いと思いますし、理論の理解によって、理解の幅が広がることは十分に考えられることです。
しかし、理論の勉強が先行すると音源を聞かなくなる危険があります。なぜなら、先ほども述べた通り、理論は再現性がある上、ジャズを聴かなくても勉強だけなら可能だからです。勉強をすると、見かけ上や出す音だけならば、すぐに自分がこれまで踏み込んだことのない所に到達できるため、上手くなった気がしてしまいます。この時、ジャズにおいてはるかに重要なリズムやフィールが忘れられて置いてきぼりを食らうことになります。
そうすると、使っている音やできることは増えているのに、自分の録音を聴くと上手くない、とか、共演者や聴衆の反応が良くない。ということが起こり、練習の方向性を見失う可能性があります。
この点について、私はこれまでいくつかの苦い経験をしておりますので、以下にいくつか紹介します。是非、あなたは同じ轍を踏まないように、音源を聞き、理論はあくまで道具であって目的にならないように気を付けて頂きたいと思います。
・まだまだ初心者の頃、無駄に音数の多い難しいイントロを自分で書いて、共演者に「リズムが出ていなくて、いつ入っていいか分からない」と一蹴される。
・バップフレーズを勉強していたころ、とにかく理論先行のフレージングで、音使いは悪くないものが弾けてはいた。しかし全然スイングおらず、ホストプレイヤーに「よく勉強していると思う」と言われる。どこまで皮肉だったか、未だに不明。今となって振り返るとそういう段階も、ある程度は上達に必要な過程であったとは思う。しかし、いずれにせよコピーしたフレーズを弾いていないというのは、ホストにはお見通しだったのだと思う。
・バンドでセッションしている時に、それぞれがやりたい曲、好きな曲をやろうといいうことになり、私の番になった。その時メンバーに「ボイシングを作り込むことが、田中の言う、好き。なんだね。リズムはあまり出ていないけど。」といった趣旨のことを言われる。
逆に、音数が少なかったり、譜面上はそれほど難しくないものをスイングさせる方が、実ははるかに難しいです。カウントベイシーのThe Heat’s Onのイントロ(下:譜面、YouTube音源例①、②)は、スタジオ録音、ライブインジャパン、モントゥルージャズフェスティバルのものが有名ですが、全て違います。楽譜的には、テンポ280あたりで二分音符を弾いているだけにも関わらず、みんな違って、全てスイングしています。理論的には、非常にシンプルなドミナントペダルに過ぎません。あともう一つだけ例を挙げておくと、モンクのソロピアノって恐ろしくスイングしています。大切なのはそういうことです。
<The Heat's Onのイントロ簡易譜例>

尚、音源を聞くとオリジナリティが失われると心配する人もいるかもしれませんが大丈夫です。誰かの真似もできない人は、オリジナリティを出すことはできませんので、安心してコピーしましょう。
3.ボーカルものやビックバンドを聴いてみる
ジャズは、多くの場合アドリブが音楽表現の主体です。特に少人数のコンボ演奏の場合は顕著で、テーマのメロディ以外は演奏時間のほとんどがアドリブで構成されます。これがジャズの魅力である一方、ジャズになじみのないピアニストや聞き手にとっては、ジャズを掴みどころのない音楽、何を楽しんで良いか分からない音楽、難しい音楽、そして喫茶店のBGMにしていることは否めません。そんな難しい部分を補うのが、ボーカルものやビックバンドだと、私は考えています。
正直、私はジャズに限らずボーカルものについてはほとんど聞いていないため、表面的な内容になってしまいますが、そもそも多くの人にとって、インストよりボーカル付きの音楽の方が聴きやすいようですね。バンドでもボーカルは必須ですし、日本に限らず大抵の音楽には歌手がいます。
で、ジャズですが、少人数編成のものでもボーカルがいる場合、ボーカルがメロディを歌って、その後、バンドメンバーの短めのアドリブが入って、またボーカルが歌う。という構成が基本的で、曲の変化も感じやすく、とても分かりやすいです。スキャットを入れる人もいるかもしれませんが、おそらく少数派でしょう。いずれにせよ、インストのアドリブの様に、スキャットのアドリブで勝負するというのはかなり珍しいパターンです。
次にビックバンドですが、こちらも曲の構成が決まっている場合が多く、展開も分かりやすいです。ソロ回しの様な曲もありますが、それでもソリ(サックス、トランペットなどの、楽器パートごとの見せ場)やトゥッティ(合奏、総奏)など、曲調も変化し、登場する楽器の種類も多いです。
それほどジャズになじみがない人でも、楽しみやすいのではないかと思います。考えてみれば、もともとビックバンドジャズは、スウィング期など、ビバップ創生前に、大衆のダンスミュージックだった経緯もありますので、そういった聴きやすさはそこ由来かもしれません。
4.レッスンの受講を考えてみたか?
なるべく独学でお金をかけずに上手くなりたいというのは、ある意味当然の感情だと思います。上記の通り、理論に限らず、探せば無料でも良いコンテンツは存在します。しかし、レッスンで自分の演奏を聴いてもらった上で先生からもらえるアドバイスや課題、自分の疑問に答えてもらえる環境は、独学よりも大きく練習の効果が上がります。
取り組み方や、どこまで真剣に取り組むのかは人それぞれなので、必ずしもプロにレッスンを受けるほどのことはない。と思う人がいるのは十分承知しています。先ほどからお金の話ばっかりで恐縮ですが、やはりレッスン料に見合うだけの練習をするのは大変ですし、通う時間も必要です。学生や社会人になりたての人ですと、そもそもレッスン料が高いというのもあるかもしれません。
そういった場合、プロまではいかずとも、セッションで居合わせた上手い人の話を聞いてみたり、スポットでレッスンしてくれる人を探す、SNSで問い合わせてみる、というのも有効な選択です。また私で良ければ、問い合わせフォームから、ちょっと気になることでもご連絡頂ければ、お力になれることもあるかもしれません。
私も大学でジャズを始めたばかりの頃は、レッスンに行かなくてもいいと思っていたこともありましたが、結局、行ってみたら学ぶことも多かったです。その辺りの経験はメルマガ登録者様向けのメールで配信しておりますので、ご興味ある方は是非メルマガ登録もご検討下さい。
以上をまとめますと、私はジャズピアノはその呼び名が浸透しているほど、その実態は理解されていないという所感を持っています。そのため、何となくジャズピアノに興味を持ったピアノ経験者がジャズを始めようとしても、想定と現実のギャップに何をしていいか分からなくなることがあります。その場合は、とりあえず安いコンピレーションアルバムで色々聞いてみたり、少し聞く内容を変えて見たり、視野を広くすることでジャズの魅力に気付き、ジャズを好きに向けた第一歩になるかもしれません。好きにさえなれば、あとは練習は続けられるはずです。
この記事が、あなたの役に立てば幸いです。
ジャズピアノ研究室 管理人
田中正大
もっとジャズについての情報を知りたい方は是非メルマガ登録をどうぞ!
類似記事「ジャズピアノ初心者におススメなジャズピアノの楽しみ方 7選」を読む。





コメント